IPA ネットワークスペシャリスト試験
いま、NWを学ぶ価値について
ネットワークスペシャリスト(NW)は「配線やプロトコルに詳しい人」の資格ではなく、組織の“つながり方”そのものを設計する役割を公的に示すものだと感じています。要件の棚卸しから、可用性・セキュリティ・コストの折り合いをつけて、現場が回り続ける形に落とす――地味に見えて、実はとてもクリエイティブな仕事です。
昨今は、DDoSやランサムウェア、サプライチェーン経由の侵害、認証情報の悪用など、“止める”“抜かれる”ことが前提の局面が増えました。けれど、それは悲観の理由ではありません。要件を正面から言語化し、ゼロトラストや復旧計画を織り込み、観測(ログ/可視化)と自動化を回す力が評価される時代になった、ということでもあります。NWの学びは、そのど真ん中にあります。
試験勉強では「午後IIから逆算して設計ストーリーを語る」練習をします。これは現場でも効きます。障害対応や設計レビュー、ベンダ調整の場で、“なぜその案か”を合意形成できる言葉になるからです。もし迷ったときは、利用者視点(業務の止まりやすい瞬間)と運用視点(監視・変更・復旧の現実)の二枚のレンズで、要件と対策を往復してみてください。ネットワークは、きっとやさしく応えてくれます。
小さく始めて、観測し、直す。完璧な初期設計より、回しながら強くなる設計がいまの最適解。NWの学びは、その回し車の軸になります。
ネットワークスペシャリスト試験(NW)|試験概要・出題領域・取得意義
      ネットワークの設計・構築・運用を中核で担う「レベル4」の国家試験。
      企業や組織の基盤を支える専門家としての力量を、筆記試験(春期実施/2026年度からはCBT予定)で証明します。
    
1. この試験の位置づけ
      ネットワークスペシャリスト試験(略号:NW)は、情報処理技術者試験における高度区分の一つで、ネットワークに関する固有技術を軸に、企画・要件定義から設計・構築・運用・保守までを主導できる人材像を想定しています。
      組織の要求を的確に把握し、プロトコルやアーキテクチャ、信頼性・可用性、セキュリティ、コストなどを総合評価して最適なネットワークを実現できることが求められます。
    
- 略号:NW(Network Specialist Examination)
- 想定ロール:ネットワーク管理者/インフラエンジニアとして、中核業務の主導と下位者の指導
- 実施時期:春期(4月)に年1回の筆記試験(2026年度からCBT方式に移行予定/出題形式や時間は同様)
2. 試験概要(方式・時間割・出題形式)
| 区分 | 時間 | 出題形式 | 出題数/解答数 | 
|---|---|---|---|
| 午前I | 9:30–10:20(50分) | 多肢選択(四肢択一) | 30問/30問 | 
| 午前II | 10:50–11:30(40分) | 多肢選択(四肢択一) | 25問/25問 | 
| 午後I | 12:30–14:00(90分) | 記述式 | 3問出題/2問解答 | 
| 午後II | 14:30–16:30(120分) | 記述式 | 2問出題/1問解答 | 
※ 年度ごとの受付や合格発表日程はIPAの「試験情報」ページを参照してください。
3. 出題領域(シラバスに基づく学習カテゴリ)
公式シラバス(Ver.4.1)では、要件定義 → 設計 → 構築 → 運用・保守のライフサイクルに沿って、必要な知識・技能が体系化されています。下記はブログ向けに学習計画へ落とし込みやすく再編したカテゴリ例です(原典は公式シラバスを参照)。
- 
        要件定義・現状分析
 事業・業務要件の収集、現行ネットワークのトラフィック分析、制約とスコープ設定、要求仕様化(性能・拡張性・信頼性・セキュリティ・運用性・移行性等)。
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        アーキテクチャ設計
 トポロジ/プロトコル設計、アドレス設計、帯域・待ち行列理論に基づく性能見積り、HA設計、リモート/モバイル/無線LAN、SDN・SD-WAN・NFVなどの仮想化。
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        ネットワークサービス・技術選定
 キャリアサービス、クラウド/エッジ、メール・Web・CDN、IoT/M2M、ビッグデータ、AI(生成AI含む)などの動向調査と評価、テスト計画。
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        セキュリティ設計・運用
 ポリシー適合、脅威と対策、ゼロトラストを含むアクセス制御、監視・ログ、バックアップ/DR、運用監視とインシデント対応。
- 
        構築・移行・保守
 ベンダ連携、構成管理、移行手順、障害対応、継続的改善(容量計画、コスト最適化、SLA/SLI/SLOの管理)。
※ 各カテゴリに対応する「要求される知識/技能」はシラバス本文に細かく列挙されています(学習計画や教材選定の目安になります)。
4. 合格基準と採点の考え方
- 午前I・午前II・午後I:各100点満点中60点が基準点
- 午後II:記述答案の評価でランクAが合格基準
- すべての時間区分で基準点を満たす必要があります(難易差への調整が行われる場合あり)
5. 資格取得の意義(キャリア・業務での効用)
- 要件~運用まで一気通貫:要件定義・設計・構築・運用・保守を横断する力を公式に証明できます。ネットワーク単体に留まらず、情報システム全体の品質・コスト・セキュリティの観点で意思決定を主導できます。
- 最新動向への理解:SDN/SD-WAN、NFV、クラウド/エッジ、ゼロトラスト、IoTなどの技術・サービス選定を、要件に基づき合理的に説明・提案できる素地が身につきます。
- 現場で効く記述力:午後I/IIの記述は、課題設定→要因分析→方針策定→設計・運用への落とし込みを、論理一貫で示す訓練になります。設計レビューやインシデント後の報告書作成にも直結します。
- 組織内の信頼と役割拡張:ベンダ/キャリア/工事会社と連携しつつ、SLAや運用設計を含む「実装現場」を動かす立場としての説得力が高まります。管理職・専門職双方のキャリアに有効です。
 
					
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